vol.567 科学も認める「森の香り」のチカラ。
自然の癒やし「フィトンチッド」で上質な眠りを手に入れる方法

column

2025.09.26

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パソコンやスマートフォンの画面を長時間見つめ、絶え間なく押し寄せる情報とタスクに追われる毎日。ようやく一日が終わりベッドに入っても、なぜか頭が冴えてしまい、なかなか寝付けない……。そんな経験はありませんか?質の良い睡眠が心と体の健康に不可欠だと頭ではわかっていても、多忙な現代人にとって、それは最も切実な悩みの一つかもしれません。

もし、その尽きない悩みを「自然の力」で優しく解きほぐせるとしたら。今回は、まるで森の中で深呼吸しているかのように深くリラックスでき、私たちの睡眠の質を劇的に高めてくれる自然由来の成分、「フィトンチッド」の魅力と、都会の暮らしに手軽に取り入れる方法についてご紹介します。

森がくれる癒やしの正体。「フィトンチッド」とは何か?

多くの人が、森を歩くと心が落ち着き、リフレッシュできることを経験的に知っています。この「森林浴」がもたらす癒やしの効果。その中心的な役割を担っている1つが、樹木が自ら発散する揮発性の物質「フィトンチッド」です。

フィトンチッドの役割と成分

「フィトンチッド」という言葉は、ロシア語で「植物」を意味する"phyton"と、「殺す」を意味する"cide"を組み合わせた造語です。その名の通り、フィトンチッドは、植物が傷ついた際に放出し、病原菌や害虫などの外敵から自身を守るための抗菌・防虫成分。いわば、植物が持つ天然の自己防衛システムであり、その力強い生命力の源なのです。

では、私たちが感じる「森の香り」の正体は何なのでしょうか。その主成分は、ヒノキやスギ、マツといった針葉樹に多く含まれる「α-ピネン」や、柑橘類の皮にも含まれる爽やかな香りの「リモネン」など、数百種類にも及ぶ有機化合物の集合体です。あの清々しく、どこか懐かしい森の香りそのものが、フィトンチッドなのです。

人体への効果

この自然が生み出した香りの成分は、私たちの心身に多くの効果をもたらすことが、数々の科学的研究によって明らかになっています。

まず挙げられるのが、自律神経への作用です。フィトンチッドを吸い込むと、心身を興奮・緊張させる「交感神経」の活動が抑制され、逆にリラックスさせる「副交感神経」が優位になることが示されています。これにより、高ぶっていた心拍数が落ち着き、血圧が安定するなど、体が休息モードへと切り替わるのです。

また、ストレスホルモンの減少効果も見逃せません。ストレスの客観的な指標となる、唾液に含まれるコルチゾールの濃度が、森林浴を行うことで有意に低下するという研究報告があります。

さらに、脳波の研究では、脳の思考や理性を司る前頭前野の活動を鎮静化させ、心のざわつきや不安感を抑える効果も確認されています。加えて、ウイルスに感染した細胞やがん細胞を攻撃する免疫細胞「NK(ナチュラルキラー)細胞」を活性化させる働きも注目されており、フィトンチッドは心だけではなく、体の防御機能を高める可能性も秘めているのです。

フィトンチッドが「眠りの質」を変えるメカニズム

なぜ、フィトンチッドは私たちの睡眠にこれほど良い影響を与えるのでしょうか。そのメカニズムを解き明かす鍵は、現代人が抱える「寝つきの悪さ」の原因にあります。

日中の仕事のプレッシャーや人間関係のストレス、そして夜遅くまでのスマートフォンやPCの使用によるブルーライトの刺激。これらはすべて、体をアクティブにする交感神経を昂らせる要因です。本来であれば、夜になると副交感神経が優位になり、心身は自然と眠りの準備を始めます。しかし、交感神経が優位な状態が続くと、心と体は緊張したままで、これがスムーズな入眠を妨げる大きな原因となっているのです。

そこで、「入眠スイッチ」として機能するのがフィトンチッドです。

フィトンチッドには、上記の様に副交感神経を優位に導く働きがあることがわかっています。
森林浴をした後、心拍数や血圧が下がるのはこのため。香りによって神経が鎮まり、心身が“眠る準備”を整えはじめるのです。
ある実験では、森林浴をした人の睡眠の深さが増し、入眠までの時間が短くなったという報告も。まさに「森の香りが、深い眠りへと導く」といえるでしょう。

都会の寝室を「森」に変える。今日から始めるフィトンチッド快眠法

「森林浴に行きたいけど、時間がない」「都会に住んでいて森が遠い…」そんな方でも、工夫次第でフィトンチッドの効果を自宅で取り入れることができます。

精油(エッセンシャルオイル)で森林浴を再現する

最も手軽で効果的な方法が、樹木系の精油を活用することです。ヒノキ、スギ、シダーウッド、サイプレス、マツ(パイン)など、日本の森を思わせるウッド系の香りがおすすめです。
就寝の1時間ほど前から、アロマディフューザーで寝室に香りを広げておきましょう。部屋全体が穏やかな森の香りに満たされ、最高の入眠環境が整います。ディフューザーがない場合は、アロマストーンやティッシュに1〜2滴垂らして枕元に置くだけでも十分効果的です。

自然素材をインテリアに取り入れる

ヒノキやスギといった国産の木材は、加工された後もフィトンチッドをゆっくりと放散し続けます。木製のベッドフレームやサイドテーブルはもちろん、カッティングボードやコースター、ペン立てといった小物でも構いません。意識的に木製品に触れる機会を増やすことで、香りと共に木の温もりを感じ、心が安らぎます。
また、ヒノキチップ(木材の削りくず)を詰めたサシェ(香り袋)を枕元やクローゼットに置くのもおすすめです。天然の優しい香りが、眠りの空間を豊かにしてくれます。

観葉植物で「パーソナルな森」を作る

寝室に観葉植物を置くことも、素晴らしい快眠法です。植物が持つ緑色は、それだけで目に優しく、心を落ち着かせる効果があります。それに加え、植物自身も微量ながらフィトンチッドや、心身をリラックスさせるマイナスイオンを放出しています。大きなものである必要はありません。小さな鉢植えを一つ置くだけで、寝室に生命感が生まれ、あなただけの「パーソナルな森」となるでしょう。

「森の香り」のバスタイムで一日の疲れをリセット

一日の終わりに、心身の緊張をリセットするバスタイム。ここにフィトンチッドを取り入れることで、相乗効果が期待できます。ヒノキやシダーウッドなど、樹木系の香りのバスソルトや入浴剤を使ってみましょう。湯気と共に立ち上る森の香りが浴室を満たし、深い呼吸を誘います。入浴による血行促進効果とリラックス効果が、フィトンチッドの働きと相まって、眠りに最適な心身の状態へと導きます。

睡眠は、体を休めるだけでなく、心を修復し、明日へのエネルギーを養う大切な時間です。
だからこそ、眠る前のひとときを丁寧に過ごすことが、人生の質を高める鍵になります。
忙しい日々の中で、意識的に自然とのつながりを取り戻すことは、決して難しいことではありません。わざわざ遠くの森へ足を運ばなくても、少しの工夫と意識で、私たちの寝室を心安らぐ「小さな森」に変えることができるのです。

まずは今夜、枕元にヒノキの香りを少しだけプラスしてみませんか?まるで森の深い呼吸に抱かれるような、穏やかで質の高い眠りが、きっとあなたを待っているはずです。

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