vol.548 ストレス社会を生き抜く鍵。
科学でわかる瞑想が脳と心にもたらすポジティブな変化

column

2025.08.01

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現代社会に生きる私たちは、情報過多、人間関係の複雑化、未来への不確実性など、さまざまな要因からストレスや心の不調を抱えがちです。こうした状況の中で、心の安定や集中力の向上を求めて「瞑想」に注目する人が増えています。「瞑想は単なる精神論では?」そう思われる方もいるかもしれません。
しかし、近年、瞑想が私たちの脳と心にどのような影響を与えるのかが、科学的な視点から次々と明らかにされつつあります。

今回は、瞑想が私たちの脳と心にどのようなポジティブな変化をもたらすのかについて、科学的エビデンスを交えながら解説していきます。


瞑想とは何か?

瞑想とは、呼吸や身体の感覚、思考などに注意を向ける心のトレーニングであり、古くは仏教やヨガの実践の一部として用いられてきました。
現代では「マインドフルネス瞑想」や「集中瞑想」など、宗教色を排した形でも実践されており、医療や教育、ビジネスの現場でも広がりを見せています。

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脳に起こる構造的な変化

瞑想を続けることで、脳の「構造」と「機能」にどのような変化が起こるのでしょうか。近年の脳科学研究では、瞑想経験者と初心者を比較した調査が数多く行われています。

脳の構造変化

アメリカ・ハーバード大学のサラ・ラザー博士らの研究(Lazar et al., 2005)によると、8週間のマインドフルネス瞑想プログラムを続けた参加者の脳をMRIで比較したところ、記憶や学習を司る「海馬」、自己認識に関わる「内側前頭前皮質」、感情調整に関係する「扁桃体」などにおいて灰白質の密度が増加したことが報告されています。

また、マインドフルネス瞑想を40日間トレーニングしたグループでは、楔前部(precuneus)や頭頂葉の厚みが増加し、デフォルトモードネットワーク(DMN)と呼ばれる脳の「ぼんやり状態」に関わる領域の活動が低下することが報告されています。

これらの変化は、脳が一度作られたら固定されるものではなく、経験によって構造的に変化する「神経可塑性(ニューロプラスティシティ) 」の一例とされ、瞑想が脳の形そのものにポジティブな影響を与えることを示しています。

脳の機能変化

瞑想は脳の「機能」にも大きな影響を与えます。たとえば、瞑想によって前帯状皮質(ACC)や前頭前野(PFC)が活性化し、感情のコントロールや注意力が向上します。一方で、ストレス反応に関わる扁桃体の活動は低下し、不安や恐怖の抑制につながります。
また、瞑想経験者は扁桃体の体積が減少し、ストレスに強くなる傾向があることも分かっています。これは、瞑想が脳の「神経可塑性」を促進し、神経回路の強化や新しい接続の形成を促すためと考えられています。

脳波と神経伝達物質への影響

瞑想は、脳の構造だけでなく、脳波のパターンや神経伝達物質のバランスにも影響を与えることが分かっています。

脳波の変化:アルファ波・シータ波の増加

瞑想中に脳波を測定すると、リラックス状態や集中状態を示すアルファ波や、さらに深いリラックス状態や創造的な洞察力と関連するシータ波が増加することが観察されます。これにより、心の平静が保たれ、より深いレベルでの洞察力が促されると考えられています。また、熟練した瞑想実践者においては、高い集中力や共感性、創造性と関連するガンマ波の増加も見られることがあります。

神経伝達物質の変化:セロトニン・ドーパミンの分泌促進とコルチゾールの減少

私たちの気分や意欲、幸福感に深く関わる神経伝達物質として、セロトニンやドーパミンが挙げられます。瞑想は、これらの神経伝達物質の分泌を促進し、気分を安定させたり、抑うつ状態の改善に繋がると考えられています。
一方で、ストレスホルモンとして知られるコルチゾールの分泌は抑制されることが示されています。コルチゾールの過剰な分泌は、心身に様々な悪影響を及ぼしますが、瞑想によってそのレベルが低下することで、心身への負担が軽減されると期待できます。

心理的・行動的なポジティブな変化

脳の構造や機能、神経伝達物質の変化は、私たちの心理面や行動面にも具体的なポジティブな変化をもたらします。

ストレスや不安の軽減とレジリエンス(回復力)の向上

扁桃体の活動抑制やコルチゾールの減少は、日常生活におけるストレス反応を穏やかにし、困難な状況からの立ち直り、すなわちレジリエンス(回復力)の向上に大きく貢献します。ストレスを感じやすい状況に直面しても、過度に反応せず、冷静に対処できるようになるでしょう。

集中力・注意力の向上

前頭前野の機能向上と脳波の変化は、仕事や学習における集中力・注意力の持続に貢献します。気が散りにくくなり、目の前のタスクに深く没頭できるようになるため、生産性の向上にも繋がります。

感情のコントロール能力の向上

扁桃体の活動抑制と前頭前野の強化は、感情のコントロール能力を高めます。衝動的な感情に流されることなく、怒りや不安といった感情を冷静に観察し、適切に対応できるようになることで、人間関係の改善にも役立つでしょう。

共感性・思いやりの向上

瞑想は、自己の内面に深く向き合うだけでなく、他者への共感や慈悲の心を育むことも示されています。他者の感情や状況をより深く理解し、思いやりを持って接することで、より調和の取れた社会関係を築く手助けとなります。

日常生活への応用と持続可能性

瞑想の魅力は、特別な道具や場所を必要とせず、日常の中で実践できる点にあります。
1日10分の瞑想でも、継続すれば心身の状態に確かな変化が現れることが、さまざまな研究で報告されています。また、スマートフォンのアプリや動画教材を活用すれば、初心者でも手軽に始めることができます。

重要なのは「完璧を求めない」こと。思考がさまよっても、それに気づいて注意を戻す過程こそが脳のトレーニングになります。瞑想を通じて自己観察の力を養うことで、自分の内面と丁寧に向き合う習慣が自然と根づいていきます。

瞑想は、特別な能力や信仰は必要ありません。単なる心のリラクゼーションにとどまらず、科学的に効果が証明された、誰にでもできる「心の筋トレ」のようなものです。
瞑想は、ただストレスを減らすだけでなく、あなたの心の健康と全体的な幸福感を高めてくれます。
テクノロジーに囲まれた現代だからこそ、意識的に“立ち止まる時間”を持つことが、真のウェルビーイングへの第一歩なのかもしれません。「時間がない」という人も、脳と心にポジティブな変化をもたらす瞑想を、日々の生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。

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