
「太った自分を好きになれない」
「他人に体型をからかわれて傷ついた」
など、感じた経験は多くの人が一度はあるのではないでしょうか。
ここ数年、美の基準が大きく変化し、従来の美の基準から自由になって、自分の体形を受け入れようという「ボディポジティブ」の考え方が世界各国で注目され、ムーブメントが広がってきています。
これまでの美の定義を覆し、ありのままの自分の体を愛すというこのムーブメントは、一体どのようなものなのでしょうか。
この記事では、意味と併せて、国内外の動きや反応を紹介します。問題点や社会の変化についても知り、自分の価値観について考えるきっかけにしましょう。

ボディポジティブとは
ボディポジティブ(Body Positive)、またはボディ・ポジティビティとは、「自分の体をありのままに愛そう」という、欧米を中心に始まったムーブメントのこと。
社会や他人が理想的な体型やサイズ、外見をどのように見ているかにかかわらず、すべての人がポジティブなボディイメージを持つに値するという主張のことを指しています。
プラスサイズの体をありのままに愛そうというムーブメントそのものを指す言葉で、「痩せた体型=キレイ」という従来の美の定義が無くなりつつあります。

ボディポジティブが広がった歴史
ボディポジティブが最初に登場したのは、1960年代後半からアメリカで広まった、ふくよかな体形の人が受ける差別に反対する動きだとされています。
イギリスの公共放送局BBCの記事「From New York to Instagram: The history of the body positivity movement」によると、1969年、肥満体型に対する世間の仕打ちに強い憤りを感じていた人たちが全米脂肪受容推進協会(National Association to Advance Fat Acceptance、NAAFA)を設立し、運動が始まったようです。
そして、現在の形のボディポジティブムーブメントが始まったのは2012年頃。
作家であり活動家であるソーニャ・レニー・テイラーのスポークン・ワード・ビデオ「The Body is Not An Apology(身体は謝罪ではない)」が大流行したこととでボディラブのためのデジタル・メディア企業やソーシャル・ネットワーキング・サイトがスタートしました。
また、当時、欧米においてスリムな白人ばかりを起用するファッション広告に対して、人種的マイノリティーの女性たちが抗議するかたちで、「自分を愛そう」とSNSで「#BodyPositive」をつけて発信したこともあり、それがプラスサイズのインスタグラマーやブロガーの人たちの共感を得て、急速に広まっていったのです。
ボディポジティブに対する取り組み
世界ではボディポジティブに積極的な企業が増加しています。その事例をご紹介します。
プラスサイズのバービー人形
多様性が広がり、2013年12月にPlus-Size-Modeling.comがプラスサイズのバービー人形の写真をFacebookに投稿をしました。
そのバービー人形はこれまでのイメージとは異なり、二重アゴとふっくらした手足のバービー人形の姿で、賛否両論を呼びました。投稿には17万人を超える人々が「いいね!」を押した一方で、「不健康な習慣を勧め、肥満を推奨している」など批判のコメントをした人が6,000人以上もいました。
メディアに登場する様々な体型のモデル
アメリカのスポーツ誌「スポーツ・イラストレイティド」が2016年の水着特集号で、アシュリー・グラハムを表紙のモデルに起用しました。
そのことがきっかけで、ファッション誌やブランドの広告に、従来の痩せているモデルだけでなく、ふくよかな体形のプラスサイズモデルが起用されるようになりました。

ボディポジティブの問題点
ボディポジティブが太りすぎや肥満であることに伴う健康上の懸念を無視していると批判をしている人も少なからずいます。
また、ボディポジティブの意味をはき違え、痩せている人が批判される傾向もあります。
痩せている人が、友人や同僚から「もっと食べた方がよい」などと言われることもあるようです。
逆に、ふくよかな人でも自分の体形を必ず愛さなければいけないと強迫観念に駆られたり、体形を愛せないことに罪悪感を抱いたりして苦しむ人が出てきたりということもあるようです。
ボディポジティブから派生したボディニュートラルの概念
ボディポジティブに似た言葉でボディニュートラルという言葉もあります。
ボディポジティブとボディニュートラルは焦点が異なります。
ボディニュートラルの意図することは、自分の体型に対する感じ方を、そのまま受け入れようということ。
ボディポジティブは外見に関係なくすべての身体が美しいことを強調することに対し、ボディニュートラルは外見に焦点を当てません。
身体に対するポジティブでもネガティブでもないニュートラルな感情を強調するため、「自分の体型が気に入らないときがあってもいい」と中立的に許容するような考えなのです。
この自分の体に対して個々が抱くネガティブな感情もポジティブな感情もそのまま受け入れるという考え方は、世界で広がりを見せています。

自分を愛し、大切にしよう
生きている限り体重の上下は起こりうるし、まったく同じ体型であっても、その日の気分で自信を持てたり失くしたりすることは誰でもあります。
そんな日々移ろい変わる多様な自身の見た目や内側の感情を認めていきましょう。
ルックスなどでとらえず、多様な人たち が活躍 できる新しい社会がスタートしています。
すべての人が自分らしさを大切に、自分を愛して大切にできることを、スタンダードな価値観にしていきましょう。

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