vol.311 佐藤香菜さんコラム Organicのある生活の魅力

column

2023.02.28

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美の概念を考えさせられるインド旅

2022年の秋にインドを旅してきました。滞在したのは首都ニューデリーと、北部のヒマラヤ山脈の麓、ヒマーチャルプラデーシュ州ダラムサラ。知人に「インドに行ってくる」と伝えると、まず返ってくる返事が「危なくない?」「すごく汚いんでしょ?」「食べ物は大丈夫?お腹壊すっていうけど・・」と、やはり良い印象は無い様子。わたし自身もインドヘはいつか行きたいと思っていたものの、いきなり一人旅には適さない予感がしていたため、今回の旅は知人と一緒ということで急遽参加を決めました。
そしてそのインド、本当に汚かったのか?という点なのですが、確かに道路の至るところにあるゴミと排気ガス、田舎のトイレにはなかなかのインパクトがありました。しかし、その町中で生きる女性たちの装いは完璧なまでの色使いとコーディネートで整えられており、黒く艶やかでしっかりケアされた髪の毛も本当に美しいのです。混沌とした環境と美しさのコントラストにインドらしさを感じつつ、滞在1日目にしてパワフルなインドを好きになることができました。

後日ニューデリーから向かったのはインド北部のダラムサラ。ここはチベット亡命政府のある場所で、あのダライ・ラマ法王が住む場所です。ニューデリーとは雰囲気がガラッと変わり、チベット人が多く住み、チベット仏教の僧院やチベット医学の研究所、チベット人の子供たちが学ぶ学校など、インドでありながらインドではないような街並みが広がっています。ヒマラヤ山脈の麓ゆえに空気と水が美しく、避暑地という言葉がぴったり。ヨガやメディテーションを学ぶために滞在する欧米人も多く、誰もが居心地の良さを感じられます。
わたしが訪れたのは、ダライ・ラマ法王の長寿法要が開催されるタイミングで、実際にその場所に入ることができました。カメラや携帯電話の持ち込みは一切禁止のため写真を撮ることはできませんでしたが、目の前1メートル先を微笑みながら歩かれた法王を拝見でき、なかなか体験できない貴重な瞬間に温かな気持ちになりました。

多くのチベット人女性たちは伝統的なチベットの民族衣装を着て生活をしています。日本の着物にも似た丈の長い巻きスカートのようなデザインは、その人に合わせてオーダーで仕立てることができるためサイズもぴったりで、皆がとても美しく着こなしています。

このチベットの伝統的な模様を施した建物は、貴重な書物を保管する図書館。乾いた空気と青い空に良く似合います。

ダラムサラでは見上げればこの景色!雄大なヒマラヤが見えますが、これでも低い山なのだそうで、本当に高い山はこの裏に隠れているため肉眼では見えないとのこと。

排気ガスで曇ったグレーの空の下、活力溢れる生活が見られるニューデリーも、空気の澄んだヒマラヤの麓で暮らす亡命チベット人が多いダラムサラも、インドという一つの国のもとにあります。全てを受け入れる懐の広さとおおらかさを感じる、受容の国インド。環境問題という視点で考えると課題は山積みなのだと実感しましたが、これから大きく変化していくパワーを目の当たりにしました。

今回お世話になった旅行会社の方の言葉が印象的でした。「インド=危ない、汚い、と言う人はたくさんいます。でもそう言うのはだいたい、インドに行ったことがない人なんです。」なるほどな、と思いました。もちろんどの国に行くのも注意は必要ですが、わたし自身も持っていた未知のものに対する先入観に気づかされました。何を美しい、汚い、と感じるのか。ただそのままの、今の姿ならではの美しさが必ずある。
国や街並み、もちろん人に対しても、そう考えられる自分でありたいなと思えたインドの旅でした。

About Villa Lodola<ヴィラロドラについて>
自然とともに生きる豊かなライフスタイルを提案していきます
ヴィラロドラはイタリア・ウンブリア州に広がる有機栽培農場で生まれたオーガニックブランドです。
Profile
佐藤 香菜(Freelance Branding Director)
世界中のナチュラル&オーガニックアイテムを展開するセレクトショップの立ち上げとディレクターを経て独立。現在はフリーランスのブランディングディレクター として多数の企業のコンサルティングや製品プロデュースに関わる。世界中のオーガニックコスメやフードを求めて旅する様子は、 NHK総合「世界はほしいものにあふれてる」への2回の出演や、オーガニック製品の魅力&ライフスタイルを楽しむ情報を、本人が実体験に基づく言葉で綴る Instagram @kana__sato622
で発信している。

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