vol.664 なぜフィジーの人々は幸せそうなのか?
“世界幸福度”で注目されるフィジーの価値観とは

column

2026.07.29

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「もっと頑張らなきゃ」
「もっと成功しなきゃ」
「もっと綺麗にならなきゃ」

私たちは毎日のように、“もっと”を求めながら生きています。

現代を生きる私たちは、かつてないほど便利で、欲しいものもすぐ手に入る、物質的に満たされた世界に暮らしています。指先ひとつで世界中の情報が手に入り、欲しいものは明日には家に届く。
それなのに、私たちの心はどこか常に急き立てられ、未来への不安や日々の焦燥感に追われています。
生活は満たされているはずなのに、なぜか心は満たされない――。
SNSを開けば誰かの華やかな暮らしが目に入り、気づかないうちに自分と比べてしまう――そんな経験をしたことがある方も多いのではないでしょうか。

そんな現代社会に生きる私たちが、一度立ち止まって見つめ直したい国があります。南太平洋に浮かぶ300以上の島々、フィジー共和国です。
透き通る青い海、美しい自然、ゆったりと流れる時間。そして何より印象的なのが、人々の笑顔。
フィジーを訪れた人の多くが、「不思議と心が軽くなった」と語ります。
なぜフィジーの人々は、あんなにも幸せそうなのでしょうか。
今回は、フィジーの暮らしや価値観から、“幸せ”について考えてみたいと思います。

フィジーってどんな国?

フィジーは、南太平洋に位置する島国です。300以上の島々から成り、美しいビーチやエメラルドグリーンの海で知られています。青い海と豊かな大自然に恵まれ、観光業や農業が盛んです。
リゾート地として人気が高い一方で、現地の人々の素朴で温かな人柄に魅了される旅行者も少なくありません。

経済的な指標であるGDP(国内総生産)を見れば、決して世界有数の裕福な国というわけではありません。
ですが、フィジーは、国際的な世論調査(GIA/Gallup Internationalなど)において、たびたび「世界一幸福度の高い国」として名前が挙がります。

「豊かさ=幸せ」ではないという価値観

私たちは、
・お金があれば幸せ
・成功すれば幸せ
・理想の生活を手に入れれば幸せ
と考えがちです。

もちろん、経済的な安心は大切です。しかしフィジーの人々を見ていると、幸せとは「持っている量」だけでは決まらないことに気づかされます。

家族と笑いながら食事をする時間。
夕暮れの海を眺めるひととき。
近所の人との何気ない会話。
そんな日常の中に、豊かさを感じているのです。
“足りないもの”ではなく、“すでにあるもの”に目を向ける。
それがフィジー流の幸福感なのかもしれません。

フィジーの幸福論を象徴するキーワード

フィジー人の心の根底には、いくつかの概念が息づいています。

① ケレケレ(Kerekere)〜「所有」から解放される究極のシェア文化〜

フィジーの文化を語る上で象徴的な文化のひとつが「ケレケレ」という相互扶助の習慣です。これは一言で言えば、「あなたのものは私のもの、私のものはあなたのもの」という精神。
誰かがお金や食べ物、生活道具に困っていたら、持っている人が見返りを求めずに分け与えます。逆に、自分が困ったときには、躊躇なく誰かに頼ります。ここには「溜め込む」という概念や、「貸し借り」に対する損得勘定がありません。
「物は、今それを一番必要としている人のところにあるのが一番いい」
ケレケレは、私たちを「所有する不安」から解放してくれます。「失ったらどうしよう」「もっと蓄えなければ」という執着を手放したとき、人の心には驚くほどのゆとりが生まれるのです。

② フィジータイム(Fiji Time)〜「今、この瞬間」を生きる時計〜

フィジーに到着した旅行者が最初に驚くのが、流れる時間の遅さです。バスが予定通りに来ないのは日常茶飯事。しかし、現地の人々は誰もイライラしていません。彼らは笑ってこう言います。「それがフィジータイムさ」。
これは単なるルーズさではありません。心理学的に見れば、究極のマインドフルネス(今ここに集中する状態)なのです。
私たちは過去の後悔や、まだ見ぬ未来の不安に膨大なエネルギーを消費しがちです。しかしフィジータイムの中に生きる人々は、「今、目の前にある美しい海」「今、隣にいる人との会話」を全力で楽しんでいます。時間をコントロールしようとするのをやめたとき、時間はストレスではなく、豊かなギフトに変わります。

③ 挨拶「ブラ!(Bula)」~笑顔を惜しまない文化~

フィジーに行くと、見ず知らずの人が満面の笑みで「Bula!(ブラ!)」と声をかけてきます。

これは「こんにちは」という意味ですが、語源は「生命」や「生きる」「喜び」など。つまり、「あなたに命の輝きがありますように」という祈りの言葉でもあります。
ポジティブな言葉を交わし合うことで、人と人との間に温かいエネルギーの循環が生まれ、一瞬で場の空気が和らぎます。

物質的豊かさと精神的豊かさの境界線

誤解してはいけないのは、先ほど述べたように、フィジーがすべての問題からフリーな「地上の楽園」というわけではない、ということです。近代化に伴う経済的な格差や、生活様式の変化による課題も存在します。

しかし、フィジーの人々が教えてくれるのは、「ないものを数えるのではなく、あるものに感謝する」という姿勢です。

幸福の心理学や経済学の研究において、収入や物質的な豊かさが一定のラインを超えると、それ以上は幸福度が比例して上がらなくなる「飽和点(幸福のプラトー)」があることが知られています。物やお金で得られる幸せ(地位財)は長続きしませんが、人とのつながりや心の安心感、健康といった幸せ(非地位財)は長続きします。
フィジーの人々は、まさにこの「長続きする精神的豊かさ」の達人なのかもしれません。

今回はフィジーの国と、その国に今も続いている習慣や考え方を見てきました。
次は、フィジーの人たちの幸福論を踏まえて、私たちもすぐにできることを考えていきたいと思います。

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