vol.659 なぜ今「希望」が必要なのか?7月12日・国際希望デーで考えたいこと

column

2026.07.13

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毎日のようにスマートフォンに流れてくるニュースを見つめていると、時折、胸が締め付けられるような感覚に陥ることがあります。
地球規模の気候変動、終わりの見えない紛争、物価の高騰や経済的な先行き不透明感。そして、SNSを開けば誰かの強い自己主張や棘のある言葉が飛び交っている――。そんな現代社会の喧噪の中で、私たちはこう自問せざるを得なくなります。
「最近、心から『希望』を感じたのはいつだろうか?」と。

日々の忙しさに追われ、目の前のタスクをこなすだけで精一杯になっていると、私たちは未来をポジティブに描く力を失ってしまいがちです。しかし、そんな私たちに「もう一度、未来を信じてみませんか」と優しく、しかし力強く語りかけてくれる記念日があります。それが、毎年7月12日の「国際希望デー(International Day of Hope)」です。

この日は、単に「前向きに生きよう」とスローガンを掲げるだけの日ではありません。世界中の困難な状況にある人々に光を当て、私たち一人ひとりが心の中に持つ「希望の種」を育てるための、大切な国際的連帯の日なのです。
今回は国際希望デーの概要とともに、私たちの人生における「希望」の意味について考えてみましょう。

国際希望デーとは?

国際希望デーは、希望が人々の人生や社会にもたらす価値を再認識するための日です。

世界では、自然災害や紛争、経済的不安、環境問題など、多くの課題が存在しています。個人レベルでも、仕事や健康、人間関係など、さまざまな悩みを抱える人が少なくありません。

そのような状況の中でも、「より良い未来があるかもしれない」と信じる気持ちは、人が前を向いて生きるための大きな支えになります。

国際希望デーは、希望の大切さを改めて見つめ直し、自分自身や周囲の人たちに希望の種を届けるきっかけとなる日なのです。

7月12日に込められたメッセージ

7月12日は、国際希望デーであると同時に、「マララ・デー」でもあります。
マララ・デーは、教育を受ける権利の大切さを世界に訴え続けてきたマララ・ユスフザイ氏の誕生日にちなみ、国連が定めた国際デーです。
2013年7月12日、当時16歳だったマララ氏は国連本部で歴史的なスピーチを行い、「一人の子ども、一人の教師、一冊の本、そして一本のペンが、世界を変えることができるのです」と語りました。
国際希望デーとマララ・デーは、それぞれ異なる経緯で制定された国際デーです。しかし、教育を通じて未来を切り拓こうとするマララ氏の姿は、「希望」というテーマとも深く重なります。7月12日は、より良い未来を信じ、自分にできる一歩を考える日にふさわしい日といえるでしょう。

なぜ今、「希望」が必要とされているのか

現代は便利で豊かな時代である一方で、多くの情報が瞬時に届く社会でもあります。
ニュースやSNSを開けば、世界中の出来事やさまざまな意見が目に入ります。その中には不安や心配を感じさせる情報も少なくありません。
また、将来の働き方や経済状況、健康への不安など、「先が見えない時代」と言われることもあります。
こうした時代だからこそ、希望の存在が改めて注目されています。
希望とは、単に楽観的になることではありません。
たとえ今が思い通りでなくても、「これから変わる可能性がある」「未来には新しい選択肢がある」と考える力でもあります。
希望があるからこそ、人は新しい挑戦をしたり、困難な状況を乗り越えようとしたりすることができるのです。

心理学が証明する「希望」の驚くべきパワー

「希望」と「願望」の違いとは何でしょうか。「こうなったらいいな」とただ祈るのが願望だとすれば、希望とは、そこへ至る道筋を信じ、自ら動こうとする意志のことです。

ポジティブ心理学の提唱者の一人であるチャールズ・スナイダーは、「希望理論(Hope Theory)」の中で、希望を単なる感情ではなく、目標を達成するための「認知的なプロセス」であると定義しました。彼によると、高い希望を持つ人は、以下の3つの要素を備えていると言います。

・明確な目標(Goals):自分がどこへ向かいたいかが分かっている。
・経路思考(Pathways):目標に到達するためのルートを複数思い描き、壁にぶつかっても別の道を探せる。
・エージェンシー思考(Agency):自分にはそれを成し遂げる力がある、と自分を信じられる。

つまり、希望を持つことの本質は、精神論ではなく「レジリエンス(心の回復力)」を高める具体的な技術なのです。希望を抱いている人は、ストレスや逆境に直面したとき、思考停止に陥るのではなく、「どうすればこの状況を切り抜けられるか」と建設的に思考を動かすことができます。希望とは、私たちが過酷な現実を生き抜くために不可欠な、心のサバイバルツールなのです。

今日からできる日常の中で希望を育てる方法

では、この7月12日という日に、私たち一人ひとりは何ができるでしょうか。大それたことをする必要はありません。今日から実践できる、小さなアクションをご紹介します。

小さな目標を持つ

第一に、「自分の未来のバケットリスト(やりたいことリスト)」を書いてみることです。どんなに小さくても構いません。
「秋になったらあの京都の寺院へ行こう」「気になっていたあの小説を読もう」。
未来の楽しい予定を想像することは、脳内に希望の灯火を宿す最も簡単な方法です。

感謝できることを見つける

第二に、毎日の中には、意外とたくさんの「ありがたいこと」があります。
美味しい食事ができたこと。
家族が元気でいること。
天気が良かったこと。
当たり前に思える出来事に目を向けることで、今ある幸せや希望に気づきやすくなります。

そして、身近な人に「感謝と肯定」の言葉を伝えましょう。家族や同僚、友人に「いつもありがとう」「あなたのこういうところ、本当に素敵だね」と声をかけること。あなたの発したその一言が、調子を落としていた誰かの心を救い、その人の「明日を生きる希望」になるかもしれません。

人とのつながりを大切に、できることをやる

第三に、希望は一人で抱えるものではありません。
家族や友人、職場の仲間など、誰かとの温かい交流は心を支える大きな力になります。
自分の身近な世界の外へ、小さなお裾分けをしてみましょう。
難民支援の団体に少額の寄付をしてみる、地域のゴミ拾いに参加してみる、あるいはフェアトレードのコーヒーを選んでみる。
自分の消費や行動が、世界のどこかにいる見知らぬ誰かの生活を支えていると実感することは、回り回って自分自身の幸福感(希望)として返ってきます。

哲学者マックス・ピカートは「希望とは、未来が過去よりも良くなるという確信ではなく、今行っていることに意味があると確信することだ」という趣旨の言葉を残しています。

希望とは、どこからか白馬に乗ってやってくる救世主を待つことではありません。
また、100%明るい未来が保証されているから前を向く、というものでもありません。

どんなに先が見えなくても、「今、自分がここで少しでも良い行動を選択することには意味がある」と信じること。そのスタンスそのものが「希望」の本質です。

7月12日。この日は、世界がどれほど暗闇に包まれているように見えても、私たちの中にある「一歩を踏み出す力」は消えていないことを思い出す日です。今日、あなたが灯す小さな心の明かりが、誰かの明日を照らす希望のバトンとなりますように。まずは自分の胸の中に、小さな希望を一つ、描いてみることから始めてみませんか。

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