私たちは日常生活の中で、知らぬ間に沢山のストレスを抱えています。
自分ではストレスだと感じていないことも、体にとってはストレスになっていることが多くあり、そのままにしておくと身体的、精神的疾患を抱えてしまうこともあります。
そんなストレスによる疾患に対する治療や予防には、運動が目覚しい効果をもたらすことが立証されています。
どんな運動をどのくらいすればいいのか、ストレスと運動の関係性について詳しくみていきましょう。
日常的なストレス
私たちは日々の生活で本当に多くのストレスを受けています。
『寒い』『暑い』と感じること、
不意に人とぶつかること、
急に大きな音を聞いて驚くこと、
そんな日常の何気ない出来事に対して、体はストレスとして認識し反応しています。
ということは、朝起きた瞬間から寝るその時までストレス反応は続いているということになります。
寝不足でも起きて仕事に行かなくてはいけない。
日中は次から次へとやってくるやるべきことに追われ、帰宅後も家事や育児に追われた生活をしている。
仕事や人間関係において感じている不安や不満もストレスになります。
このように、忙しい現代社会で生きる私たちは、無自覚のうちに多くのストレスを受け続けているので、自分でも気付かないうちにうつ病やパニック障害などの精神疾患、疲れや息切れなど体の慢性的な不調から、ひどい時には大病にまで発展してしまうケースが少なくないです。
これらの反応は、全てホルモンの影響によって起こります。
さらに詳しくみていきましょう。
ストレスホルモン発生のメカニズム
例えば、急に大きな音を聞いたり、大勢の人達の前に立つ時など、多かれ少なかれ体は緊張状態になります。
大げさな言い方になりますが、そのような恐れや不安、そして脅威を感じると、脳の視床下部がホルモンを放出し下垂体を刺激します。
すると、下垂体は別のホルモンを放出し、そのホルモンが血流によって運ばれ副腎を刺激し、副腎がストレスホルモンであるコルチゾールを放出します。
このコルチゾールの放出によって筋肉は沢山の血液を必要とし動悸が激しくなり、
心拍数が増加すると脳は意識を集中させ、危険に対してきちんと対応できるような状態を整えます。
このように、ストレスを受けると体が反応してしまう原因はストレスホルモンコルチゾールによることがわかっています。
味方になるストレス・敵になるストレス
このコルチゾールによる反応は、悪い面だけでなく、良い面もあります。
味方になるストレス
ストレスには神経を研ぎ澄ませ、集中力を高める役割もあります。
危険を察知し、自分を守ることができるのはストレス反応システムがあるからです。これが崩壊すると恐怖を感じる機能が失われ、危険な状況に陥ってもそれが危険だと判断することができず、事故や事件に巻き込まれてしまいます。
敵になるストレス
常にストレスを感じ、コルチゾールが分泌されている状態は脳の海馬にダメージを与えます。
海馬は記憶の中枢というイメージがありますが、感情を暴走させないブレーキ役としても働き、この海馬の働きによりストレス反応を緩和し興奮やパニック発作を防ぐことができます。
海馬の細胞は過度のコルチゾールにさらされると死んでしまうので、ストレスを受け続けると記憶を失う、言葉がうまく出ない、場所や方向感覚が分からなくなるなどの症状が現れることがあります。
ストレスと運動の関係性
運動がストレス対抗力を向上させることが研究により証明されていますが、その理由をみていきましょう。
運動は肉体に負荷のかかる活動であり体にとっては一種のストレスになります。
運動をしている間はコルチゾールの分泌量が増え、運動を終えるとコルチゾールの分泌量が減ります。
しかし運動を習慣づけていると徐々に、このコルチゾールの分泌量が減り、運動後に下がる量が増えるそうです。
運動の習慣化によって、運動以外のことが原因で起こるストレスを受けた時のコルチゾール分泌量はわずかしか上がらなくなり、日常的なストレス対抗力が鍛えられることがわかっています。
抗ストレス体質を培うおススメの運動
①筋力トレーニング
筋肉は、機能障害を誘発するストレス物質を取り除く処理工場として働きます。
ストレスによって生じる代謝物のキヌレニンは脳に害を及ぼしますが、筋肉の中のある成分によって無害化されます。
ストレスを無害化するシステムが筋肉には備わっているので、程よい筋力トレーニングを日常的に行うことをおすすめします。
②ランニングやスイミングなどの有酸素運動
ストレスを受けると心拍数や血圧が上がります。
運動によって同じ状況を作り出し、それが不安やパニックの前触れではなく良い気分をもたらしてくれるものだと脳に教え込むことができます。
週に2~3 回最低20分、体力に余裕があれば30分〜45分続けるのがおすすめです。
何かしらの理由で心拍数を増やせないのであれば、散歩に出かけるだけでも同じような効果があります。
生きる上でストレス回避をすることは不可能です。
それならば、ストレス対抗力を上げていけるような生活を心がけましょう。
仕事や生活環境・人間関係を整え 、受けるストレスをできるだけ抑え、
時間の使い方にも気を配り、日常的に運動を取り入れながらストレス対抗力を上げていきましょう。
日常のあれこれに追われる環境は、体にも心にも悪影響を与えます。
これを機に、生活の見直し・立て直しをしてみてください!
(※1)カオリン (※2)オリーブ果実油
参考書:運動脳
著者:アンデシュ・ハンセン
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