
週末のショッピングモール、お子さんと手をつないで歩く賑やかな家族連れを微笑ましく眺める。そんな日常の中で、ふと立ち止まって考えてしまうことがあります。もし、この温かい光景の中に、一人ぼっちで、明日さえ見えない子どもたちがいたら――。
日本では想像しにくいかもしれません。けれど、私たちが日常を過ごす街の片隅で、家族と離れて路上で生きる子どもたちがいます。彼らは「ストリートチルドレン」と呼ばれ、教育の機会もなく、暴力や搾取の危険にさらされながら、自分の力だけで日々を生き延びています。この問題は決して遠い国の出来事ではありません。
今、世界では、経済格差や家庭内の問題により、路上生活を余儀なくされている子どもが多くいます。
日本では、目に見える形で路上にいる子どもは多くありませんが、ネットカフェやファストフード店で夜を明かす“見えにくい”ストリートチルドレンが存在しています。家庭の崩壊、虐待、貧困といった背景は、実は世界でも日本でも共通しています。
このコラムでは、ストリートチルドレンの概要を説明したのちに、日本とフィリピンの実態と課題を比較しながら、私たち一人ひとりができることを考えていきたいと思います。

ストリートチルドレンとは
「ストリートチルドレン」とは、家庭の支えを失い、住む家を持たず、路上や公共の場所を生活の拠点としている18歳未満の子どもたちを指します。
ユニセフ(unicef )などの国際機関では、
①家を持たず路上で生活する子ども
②家族と関わりを持ちながらも主に路上で時間を過ごす子ども
③一時的に家を離れて路上で過ごす子ども
というようにその形態を分類しています。
この問題の背景には、貧困、虐待、家庭内暴力、戦争、親の失業や離婚といったさまざまな要因が絡み合っています。
ストリートチルドレンが存在している国
ストリートチルドレンの正確な人数は公式統計が存在せず、国連は世界全体で1億~1.5億人と推定しています。
最多とされているのはアメリカで、CONSORTIUM FOR STREET CHILDRENの2016年統計では約250万人と推定されています。
ストリートチルドレンは世界中に存在していますが、特にその数が多いとされる国や地域には、共通点があります。
極度の貧困、政治的・社会的不安定、紛争、都市部への過密な人口集中、児童福祉制度の未整備などです。
フィリピンは、マニラなど都市部にストリートチルドレンが集中しており、都市貧困や家庭の崩壊が背景にあります。近年でも、推定数十万人のストリートチルドレンが存在しています。
また、インドのムンバイ、デリー、コルカタなども経済格差、農村からの流入、児童労働が深刻でストリートチルドレンが多いエリアです。
他にも、西アフリカ最大の経済国のナイジェリアにもストリートチルドレンは数百万人存在すると推定されています。
ブラジルでもリオデジャネイロ、サンパウロなどの大都市に集中していると言われており、麻薬組織と関係した危険な労働に巻き込まれる例も多いエリアです。
上記は一例ですが、このように、世界中でストリートチルドレンは存在しています。
正確な比較は困難ですが、アメリカやナイジェリアが上位とされる一方、フィリピンやインドなどアジア諸国でも深刻な状況が確認されています。特にフィリピンは首都マニラの事例が詳細に報告され、路上での搾取や健康リスクが顕著です。
過酷な現実と根深い貧困が続くフィリピンにおけるストリートチルドレン
上記でも記載しましたが、特にフィリピンでは、ストリートチルドレンの問題はより深刻かつ広範囲に及んでいます。マニラなどの都市部では、幼い子どもたちが物乞いをしたり、ゴミ拾いをしたり、観光客相手に物を売ったりしながら、群れて生活している光景が日常的に見られます。彼らの生活条件は極めて過酷です。劣悪な衛生環境、栄養失調、感染症のリスクが高く、暴力や搾取、児童労働の危険にも常に晒されています。
フィリピンでストリートチルドレンが生まれる背景には、深刻な貧困と社会格差が深く関わっています。都市部への人口集中、家族計画の遅れ、教育機会の不足などが複合的に絡み合い、多くの子どもたちが路上での生活を余儀なくされています。また、親自身も十分な教育を受けていない場合や、日々の生活に追われている場合が多く、子どもたちに十分なケアを提供することが難しい状況にあります。

見えにくい存在と複雑な背景の日本におけるストリートチルドレン
一方、日本では「ストリートチルドレン」という言葉が一般的でないため、問題の存在自体が見えづらくなっています。しかし、家庭に居場所がない若者たちがネットカフェや24時間営業の飲食店などで夜を過ごす「ネットカフェ難民」や、児童養護施設を退所後に行き場を失う若者など、実質的に「路上に近い状態」に置かれる子どもたちは少なくありません。
日本の場合、物理的な路上ではなく、制度の隙間に取り残される形で存在しています。
こうした違いがあるものの、両国に共通しているのは、「子どもが安全に育つはずの場所を失っている」という現実です。

課題と影響
ストリートチルドレンが直面している課題は、単に「家がない」という表面的な問題にとどまりません。彼らは、日々の生活の中で複数の深刻な困難に同時に直面しています。
1. 安全の欠如
路上生活は常に危険と隣り合わせです。暴力、性的虐待、人身売買、犯罪組織による搾取などに巻き込まれるリスクが非常に高く、特に女の子は性暴力の被害に遭いやすいという現実があります。また、警察による取り締まりや市民からの差別・排除といった“制度的な暴力”もあります。
2. 教育の機会喪失
ストリートチルドレンの多くは、学校に通っていないか、途中でドロップアウトしています。制服や教材が買えない、家庭が崩壊している、住所がないといった理由で、教育制度から排除されてしまいます。読み書きや基礎的な学力が身につかないまま成長することで、将来的な職業選択や社会参加の機会が極端に狭まります。
3. 健康と衛生の問題
十分な食事が取れない、汚れた水しか飲めない、医療が受けられない──これらは日常的な問題です。慢性的な栄養不足や感染症、薬物依存症といった健康問題を抱えながらも、病院に行く手段も費用もありません。フィリピンの都市部では、ゴミ捨て場で生活する子どもたちが有毒ガスを吸い続けている例もあります。
4. 精神的・心理的影響
愛情や安心できる人間関係を持たずに育つことは、心の発達にも大きな影響を及ぼします。信頼関係の築き方が分からない、自分の価値を感じられないまま成長する子どもは、非行や孤立、自傷行為に陥りやすくなります。日本の「見えないストリートチルドレン」の中には、家に帰らずネットカフェを転々とする中で精神的に不安定になる若者も少なくありません。

ストリートチルドレンが直面する課題は、単に「かわいそう」という感情で済まされるものではありません。それは、彼らの現在を苦しめ、未来を奪う深刻な問題です。次回は、この根深い問題に対し、私たち一人ひとりがどのように向き合い、行動していくべきかを考えていきます。

アロマはベルガモットオイル、バジルオイル、ラベンダーオイルなど100%天然の精油のみをブレンド。フレッシュなハーブの香りが心地よくリラックス感のある爽やかな香り。
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