
梅雨真っただ中な6月。
しっとりとした雨が大地を潤すこの時期、日本の古き良き伝統行事「夏越の大祓 (なごしのおおはらえ)」が近づきます。
毎年6月30日、全国各地の神社では「夏越の大祓(なごしのおおはらえ)」という神事が行われます。大きな茅(かや)の輪をくぐる「茅の輪 (ちのわ) くぐり」や、人形(ひとがた)に自身の穢れを託して清める儀式など、見たことがある人も多いかもしれません。
情報過多な現代社会では、知らず知らずのうちにストレスや心の疲れが蓄積されがちです。デジタルデトックスやマインドフルネスといった言葉が浸透する今、私たちは自身の心と身体を「リセット」することの重要性を強く感じています。まさに「夏越の大祓」は、こうした現代人のニーズにも通じる、古くからの精神的なデトックスと言えるでしょう。
このコラムでは、「夏越の大祓」がどのような行事なのか、その歴史的背景や中心となる神事、そして現代に生きる私たちがこの伝統から何を得られるのかを、深く掘り下げていきます。

夏越の大祓とは何か?その歴史と背景
「夏越の大祓」は、毎年6月30日に日本全国の神社で行われる、半年間の罪穢れ(つみけがれ)を祓い清めるための大切な神事です。この行事は、来るべき暑い夏を無事に乗り越え、心身ともに健やかに過ごせるよう祈願する意味合いが強く込められています。
日本の神道において、罪穢れとは、倫理的な罪悪だけでなく、病気や災難、不幸といったあらゆる「不都合な状態」を指します。これらは日々の生活の中で、知らず知らずのうちに私たちの心身に付着すると考えられてきました。そこで、古くから人々は、川や海での「禊(みそぎ)」や、神職による「祓(はらい)」によって、これらの穢れを清めてきました。「夏越の大祓」もまた、こうした日本の「清め」の思想の根源に位置する「大祓」という神事の一つです。
「大祓(おおはらえ)」は年に二度あり、「夏越の大祓」は年末に行われる 「年越の大祓」と対をなし、一年の半分にあたるこの時期に、心身を一度リセットする意味合いを持っています。
その起源は古く、平安時代に編纂された律令の施行細則である『延喜式(えんぎしき)』(927年完成)の中にも「大祓」の記述が見られます。これは、古くから国家的な祭祀として、全国の神々に対し、人々の罪穢れを祓うことが重要視されてきた証拠と言えるでしょう。疫病や自然災害が頻繁に起こり、人々の命が脅かされることが多かった時代において、「夏越の大祓」は、来るべき困難な季節を乗り越えるための、人々の切実な願いと信仰が形になったものなのです。
夏越の大祓の中心。「茅の輪くぐり」と「人形(ひとがた)/形代(かたしろ)」
茅の輪くぐりとその意味
「夏越の大祓」で最も象徴的かつ親しみやすい行事といえば、「茅の輪くぐり」ではないでしょうか。神社の境内には、ススキやチガヤといった植物で作られた、人の背丈ほどの大きな茅の輪が設置されます。
この茅の輪くぐりの由来には、「蘇民将来(そみんしょうらい)伝説」という民話が深く関わっています。昔々、旅の神(武塔神:むとうしん、後の素盞嗚尊:すさのおのみことと同一視される)が宿を求めた際、裕福な巨旦将来(こたんしょうらい)は宿を断りましたが、貧しいながらも心の優しい蘇民将来は快く旅の神をもてなしました。後に旅の神が「疫病が流行っても、茅の輪を腰につけていれば助かる」と教え、その言葉通り、茅の輪をつけた蘇民将来とその子孫だけが疫病から免れたという物語です。この伝説から、茅の輪は厄除けや疫病除けの強力な象徴として、現在まで受け継がれています。
この茅の輪をくぐる際には、特定の作法があります。一般的には、「水無月の夏越の大祓する人は 千歳の命延ぶというなり」という和歌を唱えながら、輪を「左回り」「右回り」「左回り」と、数字の「8」の字を描くように3回くぐるのが一般的です。この作法は、古くからの言い伝えに基づいており、くぐることで心身が清められ、無病息災が叶うとされています。

人形(ひとがた)/形代(かたしろ)とは?
「夏越の大祓」には、茅の輪くぐりと並んで「人形/形代」も重要な役割を担います。「人形/形代」とは、人の形を模した紙や、神社によっては白木で作られたものです。参拝者はこの人形に自身の名前と年齢を書き入れ、軽く息を吹きかけ、身体を撫でることで、これまでの半年間に心身に付着した罪穢れを人形に移します。その後、これらの人形を神社に納めると、神職によってお祓いを受け、穢れが祓い清められるとされています。地域によっては、納められた人形を川や海に流し、穢れを水に託して遠ざける「流し雛」のような風習も残っています。
これらの神事の他にも、神職による祝詞(のりと)奏上や、玉串奉奠(たまぐしほうてん)といった厳かな儀式が執り行われ、神聖な空間の中で、人々の穢れが祓い清められていくのです。

現代における夏越の大祓の意義と参加のすすめ
現代社会において、「穢れ」という言葉は、かつてのような疫病や災害といった目に見える災厄だけを指すものではなくなりました。日々の生活の中で蓄積されるストレス、人間関係の悩み、過剰な情報に晒されることによる精神的な疲弊、SNSでの誹謗中傷や不平不満といったネガティブな感情も、私たちの心身に「穢れ」として作用していると考えることができます。
「夏越の大祓」は、こうした現代的な「穢れ」も含め、私たち自身の心と向き合い、それらを一度クリアにするための絶好の機会を与えてくれます。これは単なる厄払いというだけでなく、自身の半年間を振り返り、感謝し、そしてこれからの半年をより良く生きるための「心の区切り」となるのです。忙しい日々の中で忘れがちな、自分自身を労わり、心を整える時間を持つことの重要性を、この伝統行事は改めて教えてくれます。

「夏越の大祓」は、古くから日本人の暮らしに寄り添い、私たちを災厄から守り、心身を清めてきた大切な伝統行事です。単なる過去の遺物ではなく、現代に生きる私たちにとっても、その深い意味は今なお響き渡ります。
今年の6月30日、「夏越の大祓」は全国各地の多くの神社で執り行われます。ぜひ、お近くの神社の情報を確認し、実際に足を運んでみてください。半年間の感謝と、これからの半年の無事を祈る気持ちで、茅の輪をくぐり、人形に穢れを託す。その行為はきっと、あなたの心に清々しい風を吹き込み、来るべき暑い夏、そして秋、冬へと繋がる日々を、より前向きで健やかに過ごすための素晴らしい節目となるでしょう。
心身を清め、新たな気持ちでスタートを切る「夏越の大祓」が、あなたの日常に小さな光を灯し、豊かな日々を創造するきっかけとなることを心から願っています。

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